家族信託の登録免許税はいくら?設定・受託者変更・終了時の税率と注意点
不動産を家族信託するときは、法務局で所有権移転登記と信託登記を行います。
このとき、委託者から受託者への所有権移転登記には、原則として登録免許税がかかりません。しかし、同時に行う信託登記には登録免許税がかかります。
そのため、「家族信託による所有権移転は非課税だから、登記費用もかからない」という理解は正しくありません。
また、信託設定時だけでなく、受託者の変更や信託の終了時にも登記が必要になることがあります。特に信託終了時は、誰が不動産を取得するかによって税率が大きく変わる可能性があります。
家族信託で登録免許税が問題になる3つの場面
不動産を家族信託する場合、主に次の3つの場面で登記を行います。
- 信託を設定し、不動産を受託者名義にするとき
- 受託者が死亡・辞任するなどして交代するとき
- 信託を終了し、残余財産を帰属権利者へ移すとき
登録免許税は、登記を受けるときに国へ納める税金です。
同じ不動産を対象とする家族信託でも、どの場面の登記かによって、課税される登記と税額の計算方法が異なります。
信託設定時には2種類の登記を行う
父が所有する賃貸不動産を長男へ信託し、父を受益者、長男を受託者とするケースを考えます。
この場合、一般に次の登記を行います。
- 父から長男への所有権移転登記
- その不動産が信託財産であることを示す信託登記
登記簿上の所有者は父から長男へ変わりますが、長男が不動産を自分の財産として取得するわけではありません。
長男は受託者として、信託契約に従って不動産を管理します。信託財産は、受託者の個人的な財産である固有財産とは区別されます。
受託者への所有権移転部分は原則として非課税
信託によって委託者から受託者へ財産権を移す場合、その財産権の移転登記には、原則として登録免許税が課されません。
これは、売買や贈与によって受託者が経済的利益を得るのではなく、信託目的に従って財産を管理するために名義を取得するからです。
ただし、非課税になるのは、委託者から受託者への財産権の移転部分です。
同時に行う信託登記まで非課税になるわけではありません。
信託登記には登録免許税がかかる
不動産の所有権について信託登記を行う場合、登録免許税の課税標準は、原則として固定資産税評価額です。
本則税率は、固定資産税評価額の1,000分の4です。
例えば、固定資産税評価額が5,000万円であれば、本則税率による登録免許税は次の金額になります。
5,000万円×1,000分の4=20万円
土地については、租税特別措置法により軽減税率が設けられることがあります。ただし、軽減措置には適用期限があります。
実際に登記するときは、過去の契約書やインターネット上の古い解説を使わず、登記申請時点の税率を確認する必要があります。
土地と建物は分けて計算する
土地と建物を一緒に信託する場合は、それぞれの固定資産税評価額に適用税率を掛けて登録免許税を計算します。
例えば、次の不動産を信託するケースを考えます。
- 土地の固定資産税評価額 4,000万円
- 建物の固定資産税評価額 1,000万円
土地に軽減税率が適用される場合は、土地と建物で税率が異なる可能性があります。
また、一つの信託契約で複数の土地・建物を信託する場合も、不動産ごとの固定資産税評価額を確認します。
売買価格や相続税評価額ではなく、原則として固定資産税評価額を基礎にする点にも注意が必要です。
登録免許税以外の費用も確認する
家族信託の登記費用は、登録免許税だけではありません。
一般には、次の費用が発生します。
- 司法書士報酬
- 登記事項証明書や固定資産評価証明書の取得費用
- 戸籍、住民票、印鑑証明書などの取得費用
- 公正証書を作成する場合の公証人手数料
不動産の数や所在地、抵当権の有無、金融機関との調整の有無によっても費用は変わります。
登録免許税と司法書士報酬を分けて見積り、総額を確認することが重要です。
受託者が変わる場合にも登記が必要
受託者が死亡・辞任・解任などにより交代した場合は、新しい受託者への変更登記が必要になります。
新しい受託者は、不動産を自分の利益のために取得するのではなく、従前の受託者に代わって信託財産を管理します。
したがって、通常の売買や贈与による所有権移転とは異なる登記として扱われます。
後継受託者を信託契約で定めていても、受託者が交代したときの登記手続が不要になるわけではありません。長期間の信託を予定する場合は、将来の受託者変更に必要な費用も見込んでおく必要があります。
受益者の変更と受託者の変更は異なる
当初受益者である父が死亡し、子が次の受益者になっても、受託者が同じであれば、不動産登記簿上の所有者名義は変わりません。
受益者の変更は、受託者の変更や信託終了による所有権移転とは異なります。
もっとも、信託目録の記載事項に変更が生じる場合には、信託の変更登記が必要になることがあります。
受益者が変わったときは、相続税の申告だけでなく、信託契約と登記内容も確認します。
信託終了時は不動産を取得する人が重要
信託が終了すると、信託財産は、信託契約で定めた帰属権利者などへ引き渡されます。
不動産については、受託者から取得者への所有権移転登記と、信託登記の抹消を行います。
登録免許税を検討するときは、主に次の3つに分けます。
- 委託者本人へ不動産を戻す場合
- 委託者の相続人が取得する場合
- 委託者でも相続人でもない人が取得する場合
誰が取得するかによって、登記原因と登録免許税の取扱いが変わります。
委託者の相続人なら必ず相続税率になるわけではない
父の死亡によって信託が終了し、父の子が不動産を取得する場合でも、当然に通常の相続登記と同じ税率が適用されるわけではありません。
登録免許税法には、一定の要件を満たす信託財産の移転を、相続による財産移転として扱う規定があります。
しかし、その適用には、委託者、受益者、帰属権利者及び信託終了前の権利関係を確認する必要があります。
単に「親から子へ移る」「子が相続人である」という理由だけで判断することはできません。
信託契約を作る段階で、信託終了後に不動産を取得する人まで確定し、登録免許税の取扱いを確認しておくことが重要です。
不動産取得税は別に判定する
登録免許税と不動産取得税は別の税金です。
登録免許税は登記を受けるときに国へ納め、不動産取得税は不動産を取得した人に対して都道府県が課税します。
登録免許税が非課税または低い税率になっても、不動産取得税まで同じ取扱いになるとは限りません。
特に信託終了時は、帰属権利者が誰かによって、不動産取得税が課される可能性も確認する必要があります。
登記前に確認する資料
登録免許税を確認するときは、少なくとも次の資料をそろえます。
- 信託契約書
- 信託目録
- 不動産の登記事項証明書
- 固定資産評価証明書
- 委託者・受託者・受益者・帰属権利者の関係資料
- 信託終了または受託者変更の原因が分かる資料
- 抵当権がある場合は融資契約書や金融機関の承諾書
税率だけを先に当てはめるのではなく、どの登記を、どの原因で行うのかを確定することが出発点です。
まとめ
家族信託の登録免許税は、信託設定、受託者変更、信託終了のどの場面かによって異なります。
信託設定時には、委託者から受託者への所有権移転部分は原則として非課税ですが、信託登記には登録免許税がかかります。
信託終了時には、不動産を取得する人と委託者・受益者との関係によって、登記原因と税率が変わる可能性があります。
家族信託を設計するときは、設定時の税額だけでなく、受託者が交代するときと信託が終了するときまで想定し、司法書士と税理士の双方で確認しておくことが重要です。